オーストリア写真紀行
ザルツカンマーグート(Ⅱ)
ハルシュタットでランチをするところまで話は進んでいたと思う。ところでザルツカンマーグートにはいったいどのような町(村)と湖があるのだろうか。主な町をあげてみると鉄道沿線では、グムンデン(Gmunden)、エーベンゼー(Ebensee)、バートイシュル(Bad Ischl)、ハルシュタット(Hallstatt)、ポストバス沿線では、ザンクト・ギルゲン(St.Gilgen)、モントゼー(Mondsee)、ザンクト・ヴォルフガング(St.Wolfgang)、アッターゼー(Attersee)といったところだろうか。湖はトラウン湖、ハルシュタット湖、アッター湖、モント湖、ヴォルフガング
湖などがある。ドイツ語で湖は「der See(ゼー)」という。もうおわかりと思うがいくつかの地名は湖の名そのものなのである。ハルシュタットの散策が終わったら湖畔の道を歩いてポストバスのバス停まで行こう。バス停付近は団体ツアーバスの駐車場でもあり、多くの大型バスとそれに乗ってきた団体ツアー客でごった返している。もともと小さな村だったのが世界遺産になったおかげで世界各国から観光客が来るようになったもので、これを見るとおよそツアーというものに参加したことのない私はいささかうんざりしてしまう。
バス停付近から見たハルシュタット湖
ロープーウエイ乗り場までのバスの乗り方について観光案内書ではいとも簡単に説明しているが、手強いと思った方がいい。英語に自信がある人も気をつけた方がいい。オーストリア全土をカバーしている「ポストバス」だが、なぜポストバスと言うかというとその昔の郵便馬車が客も乗せるようになり、バス停は町々の郵便局の前にあったというのがそもそもの成り立ちだのようだ。それが現在は普通にバス路線を運行していて「ポスト」に関するものは車体に書かれたポストホルンのマークでしのぶしかない。このポストバス(の運転手)はおよそサービスという言葉とは無縁の代物である。そのためか知らないが数年前に経営破綻し、現在はÖBB傘下に入っている。
まず、日本のバスのように次の停留所の案内と掲示がされない(機能としてはバスについているのに)。ほとんどの運転手は英語を理解できない(か知らないふりをする)。質問しても無視するか面倒くさそうに答える。要は地元の人がよく知った道を行くときに仕方なく使っているといった感じだ。私はその雰囲気から国鉄末期と同じものを感じてしまった。地元の人と思われる婦人や若者と車内や車外でけんか腰で口論しているのを何回も見た。そういう代物に観光客が乗るのだから、始発から終点、途中駅から終点といった乗り方でないと初めての土地では停車すべき場所がわからない。乗る時に行く先までの切符を運転手から買うのだから、その停留所で運転手が教えてくれるだろうと思うのは他力本願の日本人だけのようである。
幸いハルシュタットのバス停から乗ってロープーウエイ乗り場はバスの終点であり、帰りは景色を覚えていれば降車ボタンを押して希望するバス停で降りることができる。
クリッペンシュタインのロープーウェイ駅より
正確にはこのロープーウエイはダッハシュタイン・ヴェルトエアベ・ザイルバーン(Dachstein-Weltwerbe-Seilbahn)という。三つの区間に分かれているが、チケット売り場で第2区間までのチケットを買おう。クリッペンシュタインの展望台は第2区間の終点ロープウェイ駅を降りて写真の道を10分ほど歩いて行く。
山上の教会とダッハシュタイン連邦に残る氷河
山頂にあるロッジ
山頂の展望台からは360度のパノラマが望める。その辺の岩の上に腰掛けてゆっくりと景色を堪能したい。先ほど散策したハルシュタットが遙か眼下に見下ろせる。この地はパラグライダーの適地のようで晴れた日には目の前から次々に飛び立って行き悠然と飛んでいるのが間近に見られる。
ハルシュタット湖の遠望
山上からの景色を堪能したら宿泊予定地のバート・イシュルへと向かおう。来た時の行程をそのまま戻ってハルシュタット経由で渡し船で駅に向かってもいいが、ポストバスをうまく降りる自信があれば途中のオーバートラウンダッハシュタインへーレン駅(ハルシュタットの隣駅)から列車に乗っても同じ事である。
クリッペンシュタインの ロープーウエイ乗り場
バートイシュル駅にはRでもREXでも30分たらずで着く。列車に乗ってあまりのんびりしていると乗り過ごしかねない。ザルツカンマーグートの探訪は晴れていないとその魅力は半減である。ウィーンやザルツブルグに滞在中に天気予報とにらめっこをして、晴れる日を狙っていくのが正解であろう。今回は日帰りではなくバートイシュルに1泊することにしたが、現地で
宿泊するホテルの予約はコムツアーズさん(の現地スタッフ)に相談するとよい。予め計画を伝えておけばいろいろと面倒をみてもらえるはずだ。バートイシュルの駅
レハールのヴィラ
バートイシュルにも見所はいろいろあるが、着く頃にはさすがに夕方になっている。オペレッタで有名なレハールのヴィラもトラウン川沿いに見ることができる。ただし、内部の見学はガイドツアーのみで夏場の特定の曜日だけの開館なので注意が必要。バートイシュルをゆっくりみたいのであれば翌日になるのだが、翌日旅行を続けてウィーンまで戻ることを考えると他の見所もあわせて優先順位を検討をしたい。
ザルツカンマーグート(Ⅲ)に続く
<文・写真: 古川 隆>
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